cky355のブログ

日々、感じること・思うことを徒然に・・・。

<ファッションの話>メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)「シネマ・インフェルノ」

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 「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」が2022年に発表した“アーティザナル”コレクションを展示するインスタレーション「シネマ・インフェルノ」に行ってきた。
 「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」とは、ベルギー出身のファッションデザイナー“マルタン・マルジェラ(Martin Margiela)”が1988年に設立したフランス・パリのファッションブランド<設立時のブランド名は、「メゾン マルタン・マルジェラ(MAISON MARTIN MARGIELA)」>。素顔を見せない、インタビューにも対応しないミステリアスな存在であったが、その前衛的なファッションスタイルと表現方法で世界中のファッション関係者のみならず、多くのファンを持つブランドに成長したが、2008年に引退。2019年ドキュメンタリー映画「Martin Margiela: In His Own Words」を発表し、2021年には日本でも「マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”」を公開している。俺も観に行ったが、非常に興味深い内容であった。一線から退けたからこその本人から見た嘗ての本人のブランドを語る、まるで本人と過去の本人を別人格化しているようだった。
2014年に、クリスチャン・ディオールのクリエイティブディレクターだった“ジョン・ガリアーノ(John Galliano)”氏を迎え、2015年にブランド名を“メゾン・マルジェラ (Maison Margiela) ”に変更している。
 現在のクリエイティブディレクターであるジョン・ガリアーノ氏も自身のブランドデビュー当時よりヒストリカル且つエキセントリックなファッションショーを開催した話題のデザイナーであり、発表の場をロンドンからパリに移し、さらに勢いを増した気鋭のデザイナーだ。マルタン・マルジェラ氏も嘗ては、老舗メゾンの“エルメス(HERMES)”のクリエイティブディレクターに就任していたことがあるが、ジョン・ガリアーノ氏はディオール時とは違ったアプローチで、“メゾン・マルジェラ”というブランドと向き合い様々なアプローチを行っている。

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 今回のインスタレーションで使用された“アーティザナル”コレクションは、2022年7月に英国の演劇カンパニー“Imitating the Dog”とコラボレーションし、この物語をオートクチュールと映画、演劇が一体化したパフォーマンス作品としてパリのシャイヨー宮で発表した。さらには、同作品のストーリーとテーマを視覚的に表現する劇場型のインスタレーションとして発展させ、今年1月パリのメゾンの本社で「Co-Ed」コレクションのショーに合わせて発表されたモノを今回のインスタレーションのために再構成させたモノだと言う。公式な発表だと「アメリカ南部を舞台に、逃亡を続ける不運な恋人たちを主人公にしたダークポエティックな物語」とのこと。

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 この独特な世界観の中に、見事に衣服を溶け込ませていた。今回のインスタレーションはマネキンによる表現で、俺には、 “過去なのか未来なのか?”、“夢なのか現実なのか?”、“見て良いものなのか駄目なものなのか?”と見た人に問いかけてくるようだった。
 嘗て、ファッションにおける展覧会を幾度来なく見てきたが、小さな会場(決して、美術館ではない空間)に映画のセットのような大がかりな構築物と共に“アーティザナル”コレクションの作品を纏ったマネキンがそれぞれのシーンに合わせて、しかも顔のないマネキンが今にも語り始めそうな世界に吸い込まれていく。

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 今回のインスタレーションは、表参道のショップ拡張及び移転に伴った記念として開催されたが、海外ブランドのこのようなPRにかけるダイナミックさは脱帽である(入場無料だし。)。見た者を単にファッション製品購入のためだけではなく、ブランドの持つ世界観を5感で体験し、ブランド自体のファンにしていく・・・本来、ブランドとはそういうものだと俺は思う。よく“世界観”という言葉を使うが、まさに“世界観”に触れて、それを具現化された一端である商品を購入し纏うことで、その世界に入り込めた悦に浸る。まさにこれがブランドビジネスなのだと再考した。

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