母が眠る東京・神楽坂のお寺でのお彼岸法要の後、お茶のむために商店街を歩く。

「あ！空いてる！」

と思わず声に出てしまった。煙草も吸える昭和レトロな喫茶店。といっても、当時は、最先端のかっこいい喫茶店だったと思う。嘗ては必ずと言って良いほど、菩提寺参拝の後に立ち寄っていたが、店主が病いだったようでずっと閉まっていた。“あ～あぁ。”といつも前を通り過ぎていたので、先日はオープンしていたのだ。

しかし、店主が代わっていた。
おそらく、元の店主は旅立たれたのかもしれない。渋い年配の店主で、昼間でもジャズを店内にかけている人だった。再開した喫茶店は、若い店主に代わり、非常に愛想の良い方であったが、佇まいから“こだわり”のある方なのだと感じた。何となく今回は無音だったが、次回くらいには自分の趣味の音楽が流れているのだろうと思う。

再開を待ちわびていたであろう、地元民で店内は賑わっていた。ある意味では、観光地っぽい神楽坂だが、この店は昔から地元民でいっぱいだった。地元に愛される店には、何とも言えぬ大らかな雰囲気が漂う。

俺にとっても、かけがえのない店の復活には喜びしかない。